外部には漏らせない本当にあったホストの会話

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■外部には漏らせないほんとにあったホストの会話

今は余り見かけないがホストを取り上げたTV番組が普通にゴールデンに放送されるなんて時代があった。
あるホストはクイズ番組のパネラーとして他芸能人と同列に出演していたり。
“ホスト”という言葉が市民権を得て馴染んで来たのもその頃だろう。
ファミリー向けの番組にホストが堂々と芸能人として出演していた。

ホストと言えど人だからそれぞれのパーソナリティーがあって一括りには出来ない。
と言う前置きをしておいてTVでは放送出来ないホストの話をしようと思う。
夜の世界というのは非常に独特で昼の世界とは全くの別物と言っていいと思う。
生きてる世界、そこでの規律、価値観。
全ては昼の人間には全く理解出来ないものだ。

例えば外見を取ってみても夜の“かっこいい”は昼のそれとかけ離れている。
一般の女性がアイドルグループの写真を見てかっこいいと思ってもNo.1ホストの写真を見れば吹き出すに違いない。
これは夜には夜の昼とは違う価値観があるからだ。

俗に言う“売れっこホスト”
ある程度の箱のNo.1ホストというのは大抵何かが欠落している。
夜でそれだけの才能を発揮するのだからすなわち昼から見るとおかしい人。
筆者の経験から言うとホストで人間性を保てるのは年収で5000万程度。
これでもギリギリ。
億単位まで行くには人間性を捨てなくてはいけない。

この人間を捨てるまで腹をくくっているかどうかが夜の世界で生きて行けるかそのものである。
ある日、待機中にホスト同士が会話をしていた。
大先輩であり、かつてNo.1を経験し現在はある程度の安定期に入っている大御所達。
彼らが人数を自慢げに話している。

「俺は3人」

「俺は5人」

「俺は2人しかいないわ」

笑いながら楽しそうに話している。

「俺は7人かな」

「俺10人いるぞ」

筆者は思う。
経験人数か?いや、そんなわけがない。
ソープに送った人数か?
この先輩で2人ってことはない。
自分の名前を使ってるAV嬢の数?
それも違う。
余談だがホスト通いのAV嬢はお気に入りホストの名前を使うことが多い。
ゆうきとか翼とか男でも使える系の名前はだいたいそれだ。
あと引退後に復帰する嬢も100%男絡みで大抵ホストの支払い。
話を戻し
一体何の人数なのかと考えていると次の言葉を聞いて戦慄した。

「大体手首だよな、飛び降りも何人かいるけど」
「ほんと参っちゃうよな〜」

そう、彼らはこれまでに自分が原因で手首を切った客や死んだ客の人数を自慢していたのだ。

ホストと客の色恋沙汰はよくある話。
特にホストの常連になるような女性は病んでいて脆い。
店内でいきなり手首を切る客も少なくないし酔って人格が変わるのも精神的なものから来ていることがほとんどだ。

田舎から出てきて風俗で働きながら東京で1人暮らしをしているような女性がホストにはまり、絶望し死んでいく。
実際に日常的に起こってしまう悲しい出来事であるが完全に夜に染まり腹をくくっている人間にとってはただの笑い話なのである。
その死には少なからず彼ら自身が原因なのは明らかなのに悪びれることもなく笑っていた。

料理人にとって火傷は勲章であり、ホストにとって死んだ客の数は勲章。
平気で越えちゃいけない一線を越えられる人間のみが夜に染まりながら生きていくことが出来る。

この会話を聞き、当時No.2で年収5000万弱だった筆者は明確に自分に越えられない線を認識し翌日に退店。
このまま人間を捨てて夜で生きていくかホストを辞めて別の道に進むか。
自分にとっては簡単な選択だった。
水商売をやっているとどうやってても少なからず逆恨みを買ってしまうもので、これから死ぬからなんて自殺予告を聞かされることもあるわけだけど、本当に死んでしまったらと思うと自分は正気でいられるかと考えてしまう。
まぁそうやって予告してくる人間は絶対に死なないわけで自分も正気でいられるわけだけど。
TVでホストの特集や新人に密着なんて企画があるけどもあれは全て脚本があり演出されている。
少なくとも有名人を次々に輩出していた自分の店に来る企画はそうだった。
視聴者の見たいホスト像を見せるだけ。
あれは昼の人間が演出した夜の人間。

本当の夜の顔は昼からは見えないよというお話でした。